東京高等裁判所 昭和31年(う)271号 判決
被告人 坂口三次郎
〔抄 録〕
論旨第一点。 刑事訴訟法第二百九十三条に
証拠調が終つた後、検察官は、事実及び法律の適用について意見を陳述しなければならない。
とあることは、まことに所論のとおりである。しかしながら、元来、裁判所は、判決をする上において検察官の意見に拘束される筋合のものではないのであるから、右規定は、単に、検察官の国家機関としての国法上の義務を訓示的に規定しているにすぎないものと解するを相当とすべく、従つて、これが規定ある以上、検察官は、これが義務の適切な履践としては、罪名によつて生ずる罰条のほか、累犯加重、没収、追徴等、その主張にかかる有罪判決に関係ある法律一連の適用につき意見を開陳することが相当ではあるけれども、最高裁判所もその判決で夙に示しているように、少くとも、裁判所が、右意見陳述の機会を与えた事実ある以上、たとえ検察官の右陳述がなくとも、裁判所は、敢てその確信するところに従い判決を為し得るものと言わねばならない。されば、本件において、検察官は、原審証拠調終了後法律の適用に関する陳述として、単に「相当法条を適用して」と開陳したに止まつたとするも、これをもつて原判決を破棄しなければならない瑕疵とするに由がない。所論は採用し難く、論旨は理由がない。
(三宅 河原遠藤)